全ての道はワールドカップに通ず 〜ドイツへの道 その2〜
あっけなかった。
すでにワールドカップ出場をほぼ決めていたという余裕もあったが、
タイで行われた最終予選の北朝鮮戦はやたらクールに試合を見ていた。
試合が終わっても落ち着いたモンで、地味にもほどがあるってもんだ。
ドーハの時のやりきれない悔しさ、ジョホールバルの爆発的な歓喜を思い出すと
今回はたいしてドキドキもしなかったし、涙ぐみもしなかったし、大笑いもしなかった。
なんつーか、達成感みたいなのがいまひとつなのだ。
無観客試合だから?いやあ関係ないなあ。
まったくなんでなんだ。本来すごくうれしいはずなのに。
見ながら「アジアの4.5枠は多いな」とぼんやり思っていた。
そして仮に出場枠が「2」だったらどうなってたんだろう、と思った。
日本は確かに勝負強くなったし、「ここぞ」という試合では逞しくもなった。
しかし結果だけ見れば、12年前の、ワールドカップの出場をあっと一歩のところで逃したドーハの時と変わっていないのかもしれない。
出場できるようになったのは、単純にアジアからの出場枠が増えたから、といえるのではないだろうか。
10数年前からアジアのワールドカップ予選ではサウジと韓国がトップクラスで
その下にJリーグとともに台頭してきた日本、ドイツのクラブに多く移籍する選手が出てきたイランがいて、
この4つがアジアの4強であることはまず間違いない。
今回の予選もかっこだけ見れば、バーレーンなどの新進国もこの4強の牙城を崩せなかったということだ。
数年前にあれだけ急成長し、勢いのあった中国は1次予選すら突破できなかった。
ドーハでのワールドカップ・アメリカ大会の最終予選の時は出場枠は「2」だった。
日本はサウジと引き分け、韓国には歴史的勝利をしたが、イランに破れたことが尾を引き、結局サウジ・韓国についでの3位。
最後のイラクに同点にされたシーンばかりがテレビでよく流されるが、出場を逃した原因は4強の中では1勝1分1敗だったってことだ。
そしてワールドカップ初出場を決めた、フランス大会の予選の時は出場枠は「3.5」。
前回の最終予選はドーハという、第3国での総当り一発勝負であったが、
フランス大会の時は今回と同じようにA.Bの2グループに分かれ、ホーム&アウェイで行われた。
ただし、今回と違うところはA.B各組の1位のみが無条件で出場決定、各組2位同士がプレイオフという格好だった。
しかも今回は各組4カ国だったが、フランス大会の時は5カ国ずつでの争いだったために、アウェイ戦も含めて今回以上に過酷な戦いだった。
結果、日本は同じB組最大の難敵、韓国には1勝1敗だったが、韓国以外の国には全てアウェイで引き分けるのがやっと。
それでもどうにか2位は確保し、A組の2位イランと第3代表をかけて戦ってかろうじて出場を決めた。
この時も各組1位ですんなり出場を決めたのはサウジと韓国だった。
今回のドイツ大会の予選突破で韓国は6大会連続、サウジは自国開催の免除がなかった上での4大会連続出場となった。
今回喜びを爆発できないのは、出場枠が4.5となり、普通に戦えばサウジ・韓国は文句なく、
日本とイランまでの4強まで含めたとしてもまず間違いなく出場できることになったからだと思う。
しかも今まで1.2フィニッシュを決められて、常に日本の上にいたサウジと韓国は別グループだ。
ドーハやジョホールバルの時に比べ、内容的には確かに日本は強くなったように思える。
しかし結果的には「アジアの中で本当に強くなったのかどうかはわからない」ままなのである。
さらに気になるのは最終予選に残った日本と同組のバーレーンや北朝鮮だ。
試合だから勝負の結果はどちらに転ぶかわからなかったにせよ、
試合内容を見れば、どちらのチームともワールドカップ出場に値するチームとはとても思えない。
国際試合から遠ざかっている影響をモロに受けている北朝鮮は
世界基準の常識から外れた試合運びで、いまだ根性に頼るしかない戦い方、
また2列目の飛び出しにまったくケアできないバーレーンのディフェンスは
アルゼンチンあたりともし戦ったら10点くらいは軽くとられるだろう。
最終予選を見てもしばらくは4強時代は続きそうだし、アジア出場枠が4.5である限り、アジア代表は4強のままだろう。
そうなるとやはり世界の視点で見てアジアの4.5枠は多いと思ってしまう。
比べてヨーロッパの予選を見ると、気の毒なほど出場枠が少ないように思える。
あそこは8つのグループに組み分けられて争われ、各組2.3のワールドカップ常連国がいるが、出場枠は13だ。
つまり数カ国の強豪国は必ず予選突破できないのだ。
前回の日韓共催の時もオランダやノルウェー、ウクライナなどが予選落ちした。
今回もフランスやデンマークが苦戦している有様なのだ。
またアフリカは新興国がどんどん出てきて、出場枠を決める判断基準すら皆目検討もつかない。
まったく実績のない国でも大国を食う可能性を大いに秘めている地域だ。
90年のイタリア大会では、退場で9人になったカメルーンが前回優勝のアルゼンチンを破ってしまったし、
日韓共催の時も初出場のセネガルが前回優勝のフランスを破り、ベスト8までいってしまった。
最近ではアンゴラ、トーゴなんていう、今まで全く世界に顔を見せたことのない国が、予選の上位にいたりする。
とまあ、もし自分が第3国の純粋なサッカーファンだったとしたら、
アジアの2.3の国よりヨーロッパやアフリカを2.3カ国多く見たいんじゃないか、などとつい非国民的なことを考えてしまうのであった。
いやしかしワールドカップに出場することがいかに大変かをさんざん力説しておきながら
出場が決まるや、ブツブツ文句言い出したりして、あたしゃあ、よほどのひねくれ者なのかしらん。
なのでここはひとつだけ、間違いなく日本が成長したことを書いとく。
それは日本代表が「アジアでの戦い方」を習得したことだ。
残念ながらアジアでの試合と世界での試合は、審判も含め、全く違う世界だ。
同じように戦っていたらどちらか一方で勝てない、といった捻れ現象がアジア地域と世界の間にはある。
アジアで1.2位の圧倒的強さを誇るサウジ・韓国は世界でボロボロにされることも多い。
フランス大会で韓国はオランダに「0−5」、前回日韓の時はサウジがドイツに「0−8」とボコボコにされた。
韓国はフランス大会までの教訓を得て、地元開催でのアジアでの予選免除を受けて、
オランダからヒディンク監督を迎え、世界基準の戦い方の切り替えに成功したからこそ、前回はベスト4までいったといえる。
日本は韓国よりもずーっと早く、少なくともオフト監督あたりからは世界基準の戦い方をしているように思う。
だから逆にアジアでは苦戦が多く、4強以外にも取りこぼしが多かったが、ここにきてアジアの戦い方にも秀でてきた。
少なくとも4強以外のとりこぼしはまずしなくなった。
アジアと世界とでうまくギアチェンジができるようになってきたと思っているのだが、
だからこそアジア4強の中での位置にこだわってしまうのかもしれない。
ホント、今回もし出場枠が「2」だったら日本はどうだったんだろう。