魅惑のユーロ2004 その2 準々決勝

 

 

1.ポルトガル.vsイングランド

 

序盤は本当に面白い試合だった。

開始早々、今まで沈黙していたオーウェンのすばらしい先制点で眠気が覚めた。

ポルトガルもフィーゴ、デコ、ロナウドを起点にグイグイ前進し、チャンスを作る。

復活したヌーノ・ゴメスも得点しそうなムード満点。

イングランドも絶好調ルーニーにボールが渡ると何か起きそうな予感がしたし、

オーウェンもゴールを決めた性か、積極的にゴールを狙う。

両チームの攻防は迫力満点、本当に面白い試合だった。

が、前半のなかばでルーニーが負傷交代すると途端につまらなくなった。

イングランドは攻撃の糸口がつかめなくなり、徐々にポルトガルがボールを支配する。

後半に入るとエリクソンはスコールズをフィル・ネヴィルに代えてしまう。まったくもう!

途端に見る気もうせてしまった。なんとつまらん交代するんじゃ。

確かにスコールズはいまいち攻撃に絡んでいなかったが、野球でいやぁクリーンアップに代えて打率一割台の守備要員を入れるようなもんだ。

当然、ますますポルトガルのポール支配率が上がり、イングランドは守勢一方。

サッカーの醍醐味である、攻守が一瞬にして切り替わるスリルは全くなくなり、野球のように攻める側と守る側がはっきりくっきり。

ポルトガルが同点とし、延長になったわけだが、徐々に眠気がカムバック。

まールイ・コスタが起死回生の逆転ゴールを決めたすぐ後、イングランドもセット・プレーからランパードが反転シュートを決めたところで少し盛り上がったくらいか。

ゲーム序盤はオーウェンとルーニーの2トップにわくわくし、イングランドに勝ち残って欲しいと思っていたが、

PK戦の時には開催国に勝ち抜いてもらって大会を盛り上げて欲しいと思うようになっていた。

そしてこの試合も消極的で守りに入ってつまんない試合をした方が負けた。

 

 

2.フランスvsギリシャ

 

しかし調子があがりきらないとはいえ、フランスが負けるとまでは思わなかった。

いやしかしあんだけのテクニシャン揃いのタレント軍団でも勝てないというのはサッカーの醍醐味ではあるか。

今回は攻撃的に行くチームが勝ち残ったと書いたが、唯一の例外はギリシャだ。

一瞬去年のレッズを見てような気になってしまった。

マンツーマン・ディフェンスもそうだが、ボールを持ってもその選手を他の選手があまり追い越していかない。

ただし、攻守の切り替えは早いし、善戦のターゲットマンへのクロスは怖い。

我慢してディフェンスして数少ないチャンスには思い切って攻撃に出る。

それがまんまんとはまっての得点だった。

レーハーゲルの手腕ってのもたいしたもんなんだろーな。

それにしてもだ、予想以上につまらん試合だった。

何とってもフランスがフランスじゃなかったとこだ。

戦前はフランスの攻撃にギリシャがどこまで耐えるか、誰もがそう思っていたはずだが、

そのフランスは全く攻撃の形ができない。

あの流れるようなチームプレイはどこへやら。時折個人技で「おっ」と思うくらい。

イングランド戦でロスタイムで逆転した時には勢いに乗ると思ったが、何か不完全燃焼のままさよならだった。

 

 

3.スウェーデンvsオランダ

 

オランダが4大会連続のPK戦まで行き、やっと4度目の正直で勝つ。

攻撃的な両ーチムであったが、0−0のまま進む。

両者とも守勢に回ったというより、お互いディフェンスが最後のところで踏ん張ったってとこか。

シュート・シーンは結構多かったし、見所満載だった。

内容からしてどちらが勝ってもおかしくなかった。

ファン・ニイテルローイとラーションという、それぞれ絶対的なストライカーの対決という意味でも面白かった。

PK戦はスウェーデンで攻撃のアクセントとなっていたイブラヒモヴィッチとオランダで舵取りをしていたコクーがはずす。

試合でよい働きをしたものはPKをはずすという、ジンクスみたいな思いがよぎる。

そして最後のオランダのキッカー、ロッベンは再三チャンスを作っていたのではずすと思った。

だが、予想を裏切り、見事に決めた。

スウェーデンは運動量が多く、全員がまとまっている良いチームだった。

スコットランド・リーグの無敵の得点王ラーションを筆頭にアヤックスのイブラヒモヴィッチ、ア−セナルのリュングベリ、と前線のタレントも魅力的。

オランダは個人技便りのところがまだまだ多く、チームとしては未完の印象だが、鬼門のPK戦を制したのでふっきれるかも。

準決勝でのホーム・チーム、ポルトガル戦は本当に楽しみだ。

 

 

4.チェコvsデンマーク

 

前半のデンマークはゲームをしているみたいだった。

自分の所にボールが来たら、2回までしか触ってはいけなくて、味方にパスしなくてはいけない、みたいな。

ダイレクト〜2回までのタッチでポンポンとボールが回った。

もちろん受け手の方もスペースへどんどん走りこまなければこのゲームは成り立たない。

チェコはその早いパス回しに引き気味になり、時には激しいプレスからボールを奪うが、攻撃は単発で得点する気配はなく、

逆にデンマークはいつ先制してもおかしくないフンイキを持ったまま前半が終わった。

そう、すばらしいサッカーを見せていたデンマークであったが、唯一「ゴール」だけがなかった。

後半に入るとチェコも意識的に前に出て、コーナーキックから長身コレルがあっさり先制してしまう。

不思議なもので攻撃の数自体はそれほど変わらないと思うのに、先制してからのチェコの攻撃が鋭くなった。

そして今大会おそらく一番決定力のあるFWバロシュが立て続けに2得点してしまう。

こうなるとデンマークの早いパス回しも徐々にスピードが落ち、ボール・タッチ数も3回以上に増えていき、

逆にデンマークのパス回しに振り回されていたチェコは余裕を持ってプレッシャーからつっかけるようになる。

0−3。この差はチーム力の差とはとうてい思えない。ちょっとした、ほんのちょっとした、でもとても大事な「何か」の差、

最後のメンタリティ、決定力、勢い、そんな目に見えない何かの違いのように思える。

思えばデンマークは96年のワールドカップでエルケア、ラウドルップの強力な攻撃力でグループリーグを勝ちあがり

これはかなり勝ち進むのではないか、と思っていたのに決勝トーナメントの1回戦でスペインのブトラゲーニョに4得点され敗退してしまった。

楽しいサッカーをやるのに、肝心のところで大敗してしまう・・・これも国民性なのかしらん。

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