全ての道はワールドカップに通ず 〜ドイツへの道 その1〜
サッカーの世界では全ての代表の試合は4年に一度のワールドカップのためにある。
この大会のために練習試合をしたり、何かの大会に参加したりして、選手の底上げをし、調整していく。
この点は、たとえばワールドカップ、世界選手権、オリンピックという3大大会を持つバレーボールや
オリンピックが最高の目標とする多くの格闘技、チームとして国内大会でのチャンピオンを主に目指す野球とは大きく違う。
サッカーにとってはワールドカップこそが、ワールドカップのみが、No.1の優勝国を決める大会である。
だからオリンピック代表は、オリンピックに出場することが目的ではない。
オリンピックでの国際経験によって次のワールドカップに繋げることが目的である。
サッカー選手にとってもチームで活躍し、代表に選ばれ、代表としてワールドカップに出場すること、
ワールドカップの舞台に立つことはほとんどのサッカー選手の究極の夢になる。
世界で一番スポーツ人口が多い競技の、最高の舞台に立つ22人は、それだけで栄誉なことであり、
それだけにプレッシャーも大きく、死に物狂いで戦う、だからこそ、ワールドカップは面白いのだ。
そのワールドカップへ続く初めの一歩が始まった。
重くて憧れのワールドカップ予選は当然、他の国際試合とは全く別のものになる。
対戦国によってモチベーションの違う練習試合ではなく、どの国にとっても同じく重い、言い訳の聞かない戦い。
そしてサッカーではとても大きな要素となるホーム&アウェイ。
予選の第1戦は、本日2004年2月18日、日本はホームでオマーンと埼玉スタジアムで対戦した。
アウェイのオマーンは0−0で十分、0−1くらいでも最悪の結果ではないだろう。
要するにオマーンにとっては「守ればいい」試合だった。
一方のホームの日本は、高温多湿のアウェイのことを考えても絶対勝たなければならない試合。
サッカーは守ればいい相手から点を奪うのはたやすいことではないことは、過去の数々の試合が表している。
9割方攻めているチームが一発のチャンスに負けてしまうことは、今までに何度も何度もあったことだ。
サッカーは格下チームが勝つ可能性が一番多くあるスポーツだ。
つい先ごろ行なわれたワールドカップでは、前回優勝、2年前のユーロでも優勝したフランスが
ワールドカップ初出場セネガルの一発のカウンターに敗れた。
もっとも有名で劇的だったのは90年のイタリア・ワールドカップの開幕ゲームだ。
前回優勝のアルゼンチンが、マラドーナへの執拗なマークで2人も退場して9人になったカメルーンに敗れた。
日本だってブラジルに勝てるのだ。10回に1回の割合かもしれないが。
そういうスポーツにおいて「守ればいい」だけのチームから得点することはいかに困難かということだ。
そのうえ忘れてはならないことがもうひとつ。
日本は前回のワールドカップでは予選を戦っていない。
岡野がVゴールを決めたジョホールバルから6年半の間ワールドカップ予選を戦っていないのだ。
どこか「オマーンは格下だからだいじょうぶ」という安心感が周りでも溢れていたが、
ワールドカップ予選に絶対はないし、簡単な試合はない。
それに初戦という、緊張感も加わればなおさらだ。
で、結局、ロスタイムに久保が冷静に(これは久保ならではだろう)得点し、勝ちを奪い取った。
状況からして引き分けでも仕方ないと思える背景があったにも関わらず、勝ちを奪い取った。
とても逞しく感じたし、この勝ちは今後に向けて本当に大きい。
ヒデが最後のインタビューで言っていたが、「勝つことが大事」であり、それ以上でもそれ以下でもない。
「よく戦った」も要らないし、「惜しかった」も要らない。
アジア・チャンピオンである日本に対しては、相手も最高の舞台のためにあらゆる手段で挑んでくる。
時にはただ守りきることだけを考え、時には怪我をさせる、苛立たせる、ためだけに動き、
何とか最高の舞台、ワールドカップに立とうとする。
その戦いに楽なものがあるはずがない。
今日の1−0の勝利。これは素直に喜ぶべきことである。
内容なんてどうでもいい。贅沢言っちゃいけない。
なぜなら日本はワールドカップ予選を「一度しか」勝ち抜いていないのだから。