レッズ悲願の初タイトル

 

 

今までサッカー観戦ではあまり雨に降られたことのない晴れ男なのだが、

こと国立でのアントラーズ戦に関しては過去2度も雨に降られたことがあり、この日も雨は避けられそうにない空模様だった。

昨年に続いての決勝進出は、運や勢いだけではない「何か」がチームに備わりつつあることを感じていた。

実は昨年は試合前からあまり勝てる気がしていなかった。

初めて決勝までは来たものの、優勝…No.1というのはそんなにうまくはいくまいと思っていた。

どちらかというとお祭りムードで決勝戦を楽しもうみたいな感覚だった。

でも今年は決勝進出を決めたときから緊張していた。

勝つ可能性があるからに他ならない。

でも多くのサポーターもそうだったのではないか。チケットが去年とは比べ物にならないくらいプラチナ化したことも物語っている。

というわけで、初タイトルに向けてドキドキしながら今にも雨が降ってきそうな国立へ向った。

試合前のサポーターの「サポート」は最高だったのではないか。

黒白赤の人模様は、駒場や埼スタでは何度もあったが、「ホーム以外」の国立でやったのは多分初めてではないだろうか。

選手の練習開始時には、溢れるばかりのフラッグが掲げられた。

まー選手にとっては、後押しというより、やらなきゃやばいという切迫感の方が強く押し寄せたかもしれないが。

しかし試合ではいつも以上の動きの良さを結果的に演出したとも言える。

いや、しかし本当に全員の動きは良かった。

いつもは口うるさく文句を言う輩が周りに必ずいるものだが、この日はひとりもいなかった。

それだけこの日のレッズは最高のパフォーマンスをし、そして強かな王者を圧倒した。

あまりに完勝だったので、拍子抜けしてしまうくらいだった。

山田はいつも以上に積極的に上がり、ほぼ危なげないボール回しをし、時にドリブルで突破した。

啓太は小笠原をマークし、ほとんど仕事をさせなかったし、奪ったボールはすぐに確実につないだ。

山瀬は2トップの後ろを前後して相手を混乱させ、また自陣近くまで守備に戻り、運動量の多さを見せた。

そして2トップはある意味いつもどおり、息のあったところを見せた。

後ろがいいと、この2人は今のJリーグのチームでは誰も止められないだろう。

オフサイドになったり、シュート・ミスを含めて達也〜エメへとボールが渡ったシーンが3度あった。

どフリーの状態からではない。

達也は相手をフェイントで揺さぶってできたほんの少しのタイミングでパスを出し、

しかもエメルソンはそのボールにちゃんと反応するという、相手からすれば手のつけられない状態だったろう。

 

達也のこの「ちゃんと抜ききらないうちにパスを出す」というプレーに成長を見る。

彼のようにスピードとテクニックのあるドリブラーは相手を抜きたがるものだ。

でも抜ききらないタイミングで味方にボールを供給できればチャンスは格段に広がる。

これができるにはフェイントの切れ味などはもちろんだが、周りが見えていることと、味方とのコンビネーションがなければできない。

そこに達也の成長、ならびに2トップのコンビネーションの良さを感じる。

それから忘れてならないが、同じタイミングで打つシュートが正確だということ。

3点目はそのすべてが濃縮されたシーンだった。

相手を抜ききらないうちに正確なシュートが打てる…こういうタイプの選手が日本から出てきたことはとても嬉しい。

これは海外では珍しくないのだが、日本ではあまり見ない。代表の決定力のヒントはこのあたりにあるのかもしれない。

ロナウドやシェフチェンコ、インザーギなど、スピード溢れる選手がよく見せている。

 

でもまー絶好調の彼でも、必ず近い内に壁があるだろうな。

でもそれを乗り越えられた時、日本代表に逞しいFWが生まれると確信する。

そしてこの日すでに予兆はあった。百戦錬磨の秋田と達也の対決は日本代表の新旧交代を思わせた。

この二人の対決は数年前のセリアAの一試合…・「ACミランvsユベントス」を思い起こさせた。

この年を最後に引退が決まっていた世界のリベロ・バレージを、

当時売り出し中だった、現イタリア代表のヴィエリがキリキリまいさせた試合だった。

この日、達也に振り回された秋田にバレージをだぶらせることはたやすいことだった。

そして日本にもカルチョの歴史が刻まれ、積み重なっていることを実感して胸が熱くなったのだった。

 

さて肝心の試合は山瀬、エメ、達也、エメの得点でと4−0の圧勝で、MVPは達也がもらう。

もちろん2トップの破壊力はすごかった。だが、それでもこの日のMVPは間違いなく、キャプテンである。

ボランチの位置で、常にバランスをとり、坪井が治療で退いた前半終了間際、ひとり少ない状態の時もくずれなかったのは

キャプテン・ウッチーが常に運動量豊富にバランスを保っていたからだ。

いつもはミスもあり、ひやひやさせられる時もあるが、この日に限ってはパーフェクトといってよかった。

ボールのカット率は両チームでNo.1だったに違いない。そして奪った後のつなぎも的確だった。

思えば、オフトのウッチーの起用に、ドーハ時代の代表における「森保」とだぶる。

二人には共通点がある…・自分は目立たない。黒子に徹することができる。チームのために献身を惜しまない…

そういう選手をオフトはチームの中心におきたがるのだろう。

 

そのオフトが優勝の後、監督を辞めるという。

社長の「おもしろいサッカーを」との希望から意見の食い違いがあったというが、

レッズに初めて優勝カップをもたらした監督を切った社長が、いったいどうテコ入れするのか、

ある意味、来年ほど不安と期待が入り混じる年はないかもしれない。

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